選挙での投票権の価値の計算について

このところ、選挙への意欲と関心が低下しているせいもあって、投票率が低下している。 私個人は、一度も投票を棄権したことが無いのだが、投票所に足を運ぶ意義を認められない人が、多くなっているようだ。

そもそも選挙での投票という行動には、直接的な個人利得は無い。 投票することで、代議士の選出の決定に参加し、自分の意思を政治に反映出来るという、「ささやかな期待」によって、動かされているものなのだ。

しかし、自分の一票は、本当に「ささやか」なものなのだろうか? 自分の一票が、どの程度の価値を持つのか、それを知らずに棄権してしまうのは、宜しくないだろう、ということで、思考実験として、衆議院選挙の投票権の金銭的価値を計算してみることにした。

荒い計算だが、衆議院選挙の一票の投票権の価値は、1,000万円に相当する、という計算結果が出たので、その計算の理由や根拠を説明してみたい。 揚げ足を取ろうと思えば取れる粗い論理立てだが、ご笑覧頂ければと思う。

先ずは、選挙によって選ばれる代議士の意思決定によって左右される金額だが、国会で審議される一般会計予算が、毎年約100兆円。 霞ヶ関の役人達が勝手に工面して使っている特別会計予算が毎年140兆円。 合計で、毎年約240兆円、という概算である。

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衆議院は、総理大臣を選出する機関であり、ここでの議決が、ほぼ全ての国の方向性を決める、という意味では、日本の国政の金の使い道を決める場所、と言っても概ね外れていない。(霞ヶ関特別会計は間接的支配になるが) この任期は、4年であるから、240兆円 x 4年 = 960兆円、まあ、約1,000兆円としておこう。

さてそれでは、その1,000兆円の使い道を決める議員を選出する、投票の数は、何票だろうか? これは、1億2000万人の人口の中で、有権者とされている人数だが、総務省のウェブページによると、約1億人らしい。

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4年間で1,000兆円の使い道を、1億票の投票で決めるイベントが、衆議院選挙、なのである。 とすると、1,000兆円を1億票で割り算すれば、一票の価値が分かる。 つまり、1,000兆円 ÷ 1億票 = 1,000万円/票 というのが答えになる。 誰にでも無償で与えられている一票が持つ潜在的な影響力は、1,000万円に該当するのである。

参議院の票の価値はどうするんだ、とか、死票はどう考えるんだ、とか指摘する点は色々あるとは思うのだけれど、スタート地点としての大掴みな計算としては、ここからスタートして良いと思っている。

収入が低い人も、有権者でさえあれば、1,000万円分の国家予算に関わる意思決定を、自分の力で代議士に託すことが出来る、というのは、民主主義の凄いところではないだろうか。 そしてその権利を行使せずに棄権してしまうのは、実に勿体ないことではないだろうか。

死票となる投票は無駄ではないか、と思うかも知れないが、自分の支持する候補に、1票余計に数字が入ることは、無駄ではない。 そして、今の低い投票率を顕現させてしまっている多くの棄権者が、投票所へ足を運ぶことで、死票を無駄にしないような選挙制度の改革も起こして行けるのである。

今の死票の多さは、小選挙区制度という極めて出来の悪い選挙制度の為に起きているが、それから利益を得て国政を左右している自民党を、追い落とさない限りは、自分の 本来なら1,000万円の価値のある投票が、永遠に有効にはならないのである。