第三企画室、出動す ~ボスはテスタ・ロッサ

日経ビジネス・オンラインの連載小説。 作中の新日鉄とおぼしき巨大製鉄会社が、日本経済の危機的状況に対して会社組織を生き延びさせる為に何が出来るのか、を模索するという目的で組織された、小さな別働隊の3人の物語。

リーマンショック以降、民主党政権奪取等の時事ネタも織り込んで、割とリアルタイム性の高い連載になっている。 又、主人公の企業「大日本鉄鋼」が仮名である以外、多くの企業が実名で出てくるので、分り易い。 Twitterの投稿の中で、いつも面白いと思っているキルギシア人さんの呟きから辿り着いた。 2009/05/11連載開始。 毎週数ページずつ掲載されているようで、2010/01/28時点で41回

↓ ↓ ↓ 以下、日経BPウェブサイトから引用 ↓ ↓ ↓

「ものづくり」の栄光にも、金融のゲームにも、なりゆきまかせの楽観論にも頼らずに、日本企業の未来を拓く。隣が何をしているのかさえ分からない大組織どうしの思惑が絡み合う巨大な経済の中で、大きな目的を与えられた個人たちに何ができるのか。製鉄会社「大日本鉄鋼」に極秘裏に組織された「第三企画室」が、走り出す。

↑ ↑ ↑ 以上、日経BPウェブサイトから引用 ↑ ↑ ↑

作者の阿川大樹氏は、「日本電気NEC)およびアスキー半導体LSI開発エンジニアおよび半導体部門事業責任者。1991年より、米国シリコンバレー半導体ベンチャー企業の設立に参加。」というから、本編の第三企画室のヘッド、旭山は作者本人だと考えても良いのかも知れない。 どうりで半導体製造に関する話の部分が非常に生々しく迫力があった訳だ。

↓ ↓ ↓ 以下、日経BPウェブサイトから引用 ↓ ↓ ↓

阿川 大樹(あがわ・たいじゅ)
小説家、コラムニスト。1954年、東京生まれ。日本電気NEC)およびアスキー半導体LSI開発エンジニアおよび半導体部門事業責任者。 1991年より、米国シリコンバレー半導体ベンチャー企業の設立に参加。1997年、小説家に転身。1999年、サントリーミステリー大賞優秀作品賞。 2005年、ダイヤモンド経済小説大賞優秀賞。著書にはシリコンバレーで起業する日本人技術者と巨大資本の闘いを描いた『覇権の標的』、最新刊は『フェイク・ゲーム』。横浜市の元特殊飲食店街・黄金町に仕事場「黄金町ストーリースタジオ」を構え、地域の人と共に、町の再生プロジェクトにも参加している。日本推理作家協会会員。

↑ ↑ ↑ 以上、日経BPウェブサイトから引用 ↑ ↑ ↑

今の所、第三企画室の具体的なビジョンにはそれほど突飛なものは無く、ある程度金を持っている高齢者層が金を出したいと思うような何らかのビジネスを、みたいな感じだが、日経ビジネスに連載されているこの作品の本来的な面白さは、超最先端なことを言うのではなく、今の世間の認識の一歩(もしくは半歩)先をビジネスマンに解説する、という所なのかも知れない。 スタイリッシュな舞台セッティング、ドラッカーの言葉等を散りばめた気の利いた会話。 小説仕立てで今の経済の状況を勉強出来る、ということか。

考えてみると、主な登場人物も、一度は引退した高齢者、キャリアウーマン、新入社員、である。 中年男性ビジネスマンが理解するのが難しい人々の内面を語り、今の状況に対する彼らの受け止め方を概説する、という役割もあるのかも知れない。

私は世間について実に不勉強だし、余り小説類を読む人間ではないので、ちょっとした縁から読み始めたこの作品、今後も読み続けてみようと思っている。

2010/05/11追記
連載開始から1周年だそうな。 今日で連載第53回。 それでも未だ一番最初のビジネスが立ち上がりそうになっているに過ぎない。 結構先が長そうだが、飽きずに読ませて呉れるのは流石。 

ところで、今日(火曜日)の日経ビジネスオンラインのアクセストップは、まさにこの連載。 「ボスはテスタロッサ」は、少なくともその週の連載が掲載された当日は、アクセストップを獲得するだけの人気があるんだな。 日経ビジネスの読者層なのか、雑誌は読まなくても、この作品を面白いと思う人達なのか。

私が風間の立場だったら、一体どんな業種を立ち上げているだろうか? そんな風に考えてみるのも面白いかも知れない。(今だったら、多分、「ネット墓守」を提案するだろうな)

2010/08/02追記
7月27日で連載終了。 最終的に本体の巨大製鉄会社を救うことはなく、旭山、風間、楠原の三名のスピンアウトユニットが独立した企業を形成して終わってしまったのがちょっと残念なような、当然なような。 重厚長大企業を、救えるようなアイディアがそんな簡単に出たら苦労しないよ、ということなのかも知れないが、阿川大樹氏には、その辺りで何らか斬新な切り口を提供し続けて貰いたかった気もする。(まさか、新日鐵辺りから苦情が日経ビジネスに入って、途中で終わらざるを得なかった、なんてことは無いよね?) 

人名
阿川大樹
発売元
日経BP
価格
無料
年(代)
2009~2010