IBM Pulse Japan 2009 Autumn で、企業資産管理システム Maximo を少し知る

IBMが企業資産管理とは?と思って、興味を抱き、無料セミナーだったので、どんなものだろうと思って申し込んでみたのだが、自分の知らなかった分野について、視野を広げることが出来た。 自分にとってファシリティマネジメントというのは、主にオフィス空間が対象だったのだが、この場合の「企業資産管理」というのは、オフィスというより、工場施設や鉄道、空港、送電線等、大規模な企業資産のことを指している。 勿論、オフィス空間もその一部ではあるが、資産価値の点からすると、多分、それらより遥かに巨大なものが包含されている。

Maximoというのは、IBMが企業の資産管理運用の為に出しているDBシステムの総称として使われているブランド名のようなものらしく、その下に、様々なサブシステムが構築されている。 どうも、IT資産を管理するTivolliという仕組みと、物理的資産を管理するMaximoという仕組みが、徐々に統合しつつあるようだ、という印象を受けた。

組織内に存在する様々なアイテム(実体があるにせよ、無いソフトウェア類にせよ)の管理を行う為に、統合されたシステムでシームレスに行う、という概念は、ERP等と共通しているが、ERP(SAP R/3等)が、人事情報や、財務経理情報に強いのに対し、Maximoはそれ以外の領域に強いようで、二つはかなり巧く補い合えるようだ。 少なくとも、IBM側の説明と、SAP R/3で長いコンサルティング経験を持ち、その後Maximoのコンサルティングも始めたベテランコンサルタント、ワクコンサルテイング株式会社の藤永和也氏の話ではそんな印象だった。 Maximo側には、SAPのデータベースと巧くシステムを繋ぐコネクタが開発されているらしい。

そういえば、10年以上前、SAPが日本で旗揚げした時に、SAPのファシリティマネジメントモジュールを作ったら良さそうだな、と考えたことを思い出した。 ついでに、20年程も昔、古巣の大手ゼネコンに居た時に、ファシリティの管理と運用を統合的に記述するシステムを作ったらどうか、というアイディアを出して、周囲のベテラン社員から「大言壮語にも程がある」とたしなめられたことも思い出した。 どこでも似たようなことを考える人間は居るものだが、実際、それを実行に移すか移さないか、なんだな、と痛感する。

話をMaximoに戻すと、海外の巨大企業の中でも、SAPとMaximoの組み合わせで事業を合理化して動かしている会社が相当あるらしい。 韓国のSumsungもそうらしく、藤永氏は、日本の家電業界がSumsumgに水を開けられつつある現状を心配しておられた。 多分、レガシーな固定資産と、それらの旧態然とした管理の仕方で、日本の産業の設備投資が効率的にスクラップ&ビルト出来なくなっていることも、競争力の低下の大きな原因の一つなのだろうとは思う。(実際、オフィスのファシリティマネジメントやっていても、そう思うことが多々ある)

それにしても、長期間オフィスのファシリティマネジメントに関わっていて、こういう設備系のシステムの勉強をしてきていないことが残念に思える。 とても気宇壮大で面白そうな世界が、ここに広がっていることに気が付いたからだ。 勿論、オフィス空間のファシリティマネジメントも、様々な事物が複合して関わり、面白いことこの上ないのだが、この「企業資産管理システム」というものが示唆する領域は、オフィス空間を包含して更に遥かに広大なものを示しているようだ。

Maximoについては、もう少し調べてみようと思う。 SAP R/3の方が先発で、ずっと知名度が高く、それに絡んでIBMも企業の根幹システムに存在感を確立しようという戦略的なものも感じる。 尤も、日本では余り知られていないが、世界各国の大企業では、もうかなり普及しているらしいから、これが日本の製造業に何らか良い影響を及ぼし得るものなのかどうかも、調べてみたい。 垂直統合型の日本企業グループでは不要だったものも、水平分業型の産業構造に転換するにつれて、このようにシステム的で、かつ企業売却や統合が迅速に行える資産管理が求められているのかも知れないからだ。