情報と文化


自分の人生の方向性に大きな影響を与えた本の一つ。 高度情報化時代の先駆ともなった名著だ、と思う。 自分にもそういう指向性があったから影響を受けたのだろうが、この本無くしてはこれほど「情報について考える作業」にのめりこまなかったかも。

1987年夏、赤坂の書店で偶然手にした420頁を超える分厚い書籍だった。 「情報と文化」という題名と当時としては奇抜なデザインに妙に惹かれ、これから友人の結婚式なのに強引に購入。 

初版が1986年11月1日なんだが、87年1月20日にはもう5刷になっているところを見ると、良く売れたんだろうか。 それにしては自分の手許以外でこの本をみかけたことが無いのは何故なんだろう?

学生時代から意識していた松岡正剛の名が表紙にあったのも影響していたかもしれない。 彼のあとがきにはこういう記述がある。

「本書は最も広い意味における情報論の入門書である。 標題にみられるように、とくに情報の多様性・同時性・選択性をめぐる特質を抽出することに主旨がおかれている。 とりあげた範囲はまことに広く、物理学、生物学から言語論、文化論、企業論にまでおよんでいる。 また最近の自己組織化理論やネットワーク理論の紹介にもつとめた。」

「もともと本書は、1984年からはじまったNTT主催の情報文化研究フォーラムの議論にもとづいて構成されている。 フォーラムはINS計画にともなう高度情報化社会の文化像を根本から検討するという観点ではじめられ、できるかぎり自由な討論をかさねることを主眼に、これまでつづけられている。」

この時期に「ゆらぎ」だの自己組織性だのオートポイエシスだのselfish-geneだのといった様々なキーワードを教えて貰ったこと、それを何年もかけて咀嚼していったことが、今の自分に大きな影響を与えているのは間違いない。

色々言われているが、NTTも結構やるもんだ。 というか多分、NTTって凄い組織なんだろうな。 ただ図体がデカ過ぎて、こういう良いことをやっている部分だけじゃない、ってことかな。

この書籍で紹介されて、後に時代のキーワードになった言葉、人物は結構多いように思う。 

正直言ってNTTのこの辺り(情報文化研究フォーラム)の研究発表って、難しすぎて理解出来ないものもあるんだが、全ての出発点はこの本にある、と思っている。 そのうち段々理解し、自分の中に取り込んでやろう、と思う。
発売元
NTTad Books in Form http://www.nttpub.co.jp/vbook/list/...
価格
最初2800円だったのが今では3500円