ワン・ゼロ

寡作ではあるが私が最も好きな漫画家の一人佐藤史生の代表作の一つ。 人工知能であるマニアックが絡んでいることもあるが、土着アミニズム(混沌と自由)と仏教(確立された秩序)のせめぎ合い、という図式が好きで、何度も何度も読み返している。 1984年の作品とは信じられないような未来性を感じる。(インターネットなんて未だ知られていなくて、電話のダイヤルアップで人工知能に繋げているのだけれども)

出版社の紹介分引用:
1500年の昔、神との戦いに敗れた4体の魔神将が泥舟に乗って日本列島に流れ着いた。 彼らの骨灰は風にちり水に溶け、ゆっくりとこの国を覆っていった・・・ 1998年、東京・西シンジュク。 時はカリ・ユガ=末世にあり。 そして世界は、人類を救済して世界を導くことになるアートマンとなるべき者をひそかに育てていた。 その2人、明王寺都祈雄と日印ハーフの妹・摩由璃が出会うことから、この物語は始まる。

全編、かなり引き込まれつつ読み通せる、と思う。 少し難しい用語も出てきたりするが、自分自身、佐藤史生に影響されて読んだ書籍やら知ることになった分野、というのが沢山ある感じで、その辺りは適度な刺激を与えて呉れたことに感謝している。 前編というか、このワン・ゼロの元になった「夢喰い」は短編だったがとても印象的な作品だった。 続編(番外編)として「打楽天」というのもあるが、こっちは割と気楽に読める。 最近身近に佐藤史生を読む程の漫画好きが居ないので、あれこれ語り合えないのが残念。

ネット上で見つけた感想文。 かなり私の感想に近い。 案外とネット上での記載・言及は少ないなあ。 一般受けしなかったのだろうか。 ちなみに、登場人物の中で好きなのはコンピュータオタクのアキラだけれど、人間的なエミーも好き。

登場人物(AI?)のマニアック、話中では、魔(ダーサ)の真言に接することで自我を持つようになるのだが、Google社の登場でハードウェア的には、いよいよマニアックのレベルが達成され、後は人類全てのデータを詰め込んで熟成させる「覚醒」の時期が近づいてきたのかな、と思ったことを思い出す。 以前はGoogleの創業者達の目的は実際にマニアックのような存在を創り出すことなのではないか、とも思っていたのだけれど。


人名
佐藤史生
商品名
ワン・ゼロ (1) (小学館文庫)
価格
¥590
著者
佐藤 史生
出版社
小学館
発売日
1996-10
URL
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091911145/kanshin-1-22/ref=nosim