ライラの冒険シリーズ全3巻

ファンタジー好きなら見逃せない英国の硬派冒険長編。 一巻二巻と続けてカーネギー賞を受賞し、三巻は2001年ウィットブレッド賞を受賞(英国の二大文学賞の一つらしい)。

ウィットブレッド賞について:
日本語の説明 http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/...
英語のホームページ http://www.whitbread-bookawards.co.uk...

 ま、賞なぞ関係ないが、三巻邦訳を一日千秋の想いで待っておりました。(去年冬、ニュージーランドで原作を買って読もうかと悲壮な覚悟を固めかけた程に)

我々の世界と僅かだけ差異のあるパラレルワールドから始まった冒険が、数々の世界を駆け巡り、教会(権威)との壮絶な最終戦争にまで突入する、息もつかせない展開の面白さ、設定の妙である。

面白かったのは、作中でキリスト教の直線史観(っていうの?)に対して東洋的な輪廻転生的な生命観を主張しているように思えたこと。 来世を望むより現世で全力を尽くせ、という言葉。 最後の切なさには思わず涙がこみ上げそうになったが、読後感は最高で、一夜明けてもまだ心地よい余韻が胸の中に波打っている感じがする。

一巻:黄金の羅針盤 ライラの冒険シリーズI
二巻:神秘の短剣 ライラの冒険シリーズII
三巻:琥珀の望遠鏡 ライラの冒険シリーズIII

★ところで、一巻の帯に「ナルニア物語に熱中した人に」って書いてあるが、この作品、結構アンチキリスト教会の作品だと思う。 だからキリスト教そのものであるナルニア物語と一緒にしちゃ、まずいような気もするんですけど。 宗教観を抜きにして物語として楽しめる、という意味なら同意すしますが。

筋運びはちょっと強引すぎないか、とも思うのだけれど、作者フィリップ・プルマンが提示しようとする世界観に引っ張られて、そんなことは些末に感じる程、どんどんのめり込んでしまいました。 3巻合計1,600ページと、相当長いですが、息もつかずに読み上げられるんじゃないか、と思います。

ハリー・ポッターシリーズと並べて語られることもあるようだが、正直言って長年のファンタジー読みとしては、ハリー・ポッターは背骨に当たる世界観が曖昧で、子供騙しに思える。 ライラの冒険シリーズは、もっとずっと歯応えがあって、本好きの大人にも堪能出来る傑作である。

2007/12/07追記
今日、北米で映画が封切られるらしいが、カソリック教会から大クレームらしい。 逆に話題性が高まりそうだが、ポシャらずに日本でちゃんと公開して欲しい。