計算不可能性を設計する - ITアーキテクトの未来への挑戦

流水書房でふと目にして手に取ったら、実に面白くて、GWに一気に読了。 神成淳司 x 宮台真司という二人の対談本なのですが、私の読解力レベルでやっと分かったような気になれるギリギリレベルの内容でした。 ITアーキテクトの神成さんに対して、今の日本の社会の状況に危機感を持っている社会学者の宮台さん(私と同じ年齢)が色々無理難題を持ちかけ、それを年下の神成さんが、真剣に、しかも前向きに受け止める、という感じだろうか。

蛸壷化が進む日本の知性の世界をどう活性化し、新しい知識人を産み出して行けるのか、という辺りの会話も面白かった。 同時に二人が話していることが、自分としては漫画版の攻殻機動隊by士郎正宗が1991年に描いていたものにやっと現実世界が近づきつつあるんだな、と感じさせられた辺りが痛快であると同時に、いよいよ来るんだな、未来が、と。

正直言うと宮台さんの物の表現は抽象度が高くて訳が分からなくなりやすく、それを受ける神成さんの対応(回答)の部分で「ああ、要するにこういうことを訴えていたのか」と理解する、というパターンが頻出。 神成さんは流石に現場に出て企業の人達と共に具体的な「物」を世に出してきているだけに、言葉が具体性を持っていて理解し易い。 やはり自分は現場で具体的な「物」を相手にしている会社員なので、そっちの方が親しみを感じるのだ。

但し、二人とも生理学的に人類が持っている直接対面時の超高精度・高速コミュニケーションと、メディア経由での代替コミュニケーションの大きな違い、というものに言及しておらず、ファシリティマネージャーとしては一言あり。 何故バーチャルとリアルが区別されるのか、その部分が大きな問題なのか、その辺りをもっと掘り下げて欲しかった気がしています。

本書目次より(一部抜粋)
社会に役立たないITは評価ゼロ
コンピュテーションにとって人間が必要とされる意味
スペシャリストとジェネラリストのこれから
コンピュータを使うときに人間が最低限認識すべきこと
表現としての価値を評価しない日本の現状
虚構と現実についての捉え方の差異性
コンピュテーションの誇大妄想化による弊害
現実社会からアフォーダンス的に乖離しているIT
コンピュテーションと人間の役割の代替性
人間がコンピュテーションで置き換えられないもの
アップルやマイクロソフトと日本企業との相違
社会のサーキュレーションが健全に作動していない日本
ソーシャルデザインや全体性を考えないエンジニアリングが引き起こす問題

価格
1680円
ISBN
978-4-901391-80-1商品を見る
発売元
ウェイツ
年(代)
2007年3月
人名
神成淳司
URL
http://www.miyadai.com/