モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

「モモ」は、私の物の考え方のある重要な部分を構成する元になった、大切な本です。 この本を高校時代、大学時代、社会人になってから、何度も読み返して、その度ごとに新しい発見があります。 特に時間貯蓄銀行と灰色の男達の部分。

時間とは人生そのものであり、その時間を吸い取られた者は、生きているようで、実は「生き」ていない。 時間の「無駄」を排してキリキリと働き、効率を上げることに血道を上げる者は、会社(システム)を利するだけで、本当の意味での生き生きとした人生を失ってしまうことにもなりかねない。 最近流行の「ライフハック」も、単に仕事の速度を上げるだけだったら、組織の走狗になり果てるだけのこと。

ここ数年、周囲の友人に初めての赤ちゃんが生まれると、お祝いに「モモ」を一冊、お贈りすることにしています。 大抵の人はモモを読んだことがなくて、「一体何の本だ?」と思うようです。 しかし、誰もが忙しい今、子育ての期間を楽しんで子供と(そして伴侶と)過ごすことは大切なことだと思うのです。 忙しい中でも、「モモ」を一読して貰って、自分の時間を味わうことを再度思い出して貰いたい、ということで、余計なお世話だと思いつつ、そういうお祝いを贈っています。(自称「「モモ」を贈る会」です)

童話の形式を取っていますが、実は結構理屈っぽい本かも知れません。(私は実は作者エンデがかなり理屈っぽいと思っています) 又、私が紹介してこの本を読んだ方の中には、「そんなこと言われたって忙しいしどうしようもないじゃないか!」と却ってストレスを感じた、という人も居たようです。 しかしそれでも敢えて、そういう方達にこそ、「モモ」を手に取って読んでみて頂けたら、と思うのです。

作者のミヒャエル・エンデは、エンデの遺言等に見られるように、重要なテーマとして、お金・通貨の問題を深く考えていました。 経済的合理性に追われ、既存の通貨経済システムを唯一無二の物として受け入れてしまう前に、人間が作ったシステムの一つとして再考してみる、という彼の姿勢に共感すると共に、これから社会に出て行く子供達にも是非、今の経済システムに対する疑問の投げかけとして、「モモ」を手に取って貰えたら、と願っています。

Bookcrossing登録

2008/10/02 http://commonsmarker.com/mark/7627「[金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った]」 in Amazon.co.jpコメント

2008/10/11追記
今、世界的に大恐慌の様相となり、バタバタと金融系企業が消えたり倒れたりしていますが、何となくモモのクライマックス部分の、灰色の男達が時間の冷凍保存庫(=人間の信用)へのアクセスが出来なくなった場面でお互いを消しあい段々に数が少なくなっていった様相と似ているな、と思い始めました。 彼らの吸っていた時間葉巻が手に入らないのは、人間の「時間≒信用」を失った状態と一緒だということかな、と。 実態経済にも影響が出てくるでしょうから、他人事ではないのだけれど、ある意味では興味深いことだと感じています。

私と良くにた考え方でモモと「エンデの遺言」を捉えておられる方のブログエントリを発見。





価格
1700円
ISBN
4-00-110687-6商品を見る
発売元
岩波書店
人名
ミヒャエル・エンデ
商品名
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
価格
¥1,785
著者
ミヒャエル・エンデ
出版社
岩波書店
発売日
1976-09-24
URL
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4001106876/kanshin-1-22/ref=nosim