新型コロナで直接対面コミュニケーションが逆風下にあるが、敢えてその利点を言う

京都大学学長の山極先生と言えば、霊長類の権威で、流石に不勉強な私でもお名前を存じ上げている方だが、直接対面コミュニケーションについて、非常に示唆に富んだインタビュー記事を、Facebookで教えて貰った。 以下は、気になった内容の抜き書き。

 

  • チームは、目的と計画性がセットになってはじめてつくられる。それを可能にしたのは、人間が熱帯雨林に出たことで想像力を持つようになったから。
  • 人間は、牙をつくったり身体を大きくしたりして身体に武器をつくるのではなく、共感力を高めて協力しあうことを始めた。
  • 共感力が想像力を生み、チームワークを可能にしたと言えるかも。
  • 言葉は、人間が五感で感じるものをいったん抽象的にして再現する、非常に効率的でポータブルなもの
  • 目の前で怪我をした人がいれば強く共感するけれど、そばにいない人の苦しみや喜びは想像するのが難しい。そこにはひとつの限界がある
  • 五感のなかで、一番リアリティをもたらすのは視覚と聴覚です。「見る」「聞く」は共有できる感覚
  • おもしろいことに、この触覚や嗅覚、味覚という「共有できないはずの感覚」が、信頼関係をつくる上でもっとも大事なもの

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  • 触覚は触れると同時に触れられてもいますから、非常に共有が難しい。だから、母子もカップルも、肌の触れ合いを長くすればするほど信頼が高まる。それは、「触覚」という本来「共有できない感覚」を一緒に経験しているから
  • チームワークを強める、つまり共感を向ける相手をつくるには、視覚や聴覚ではなく、嗅覚や味覚、触覚をつかって信頼をかたちづくる必要があり
  • 合宿をして一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って、身体感覚を共有することはチームワークを非常に高めてくれますよね? つまり我々は、いまだに身体でつながることが一番だと思っている
  • 人間は言葉や文字をつくり、現代ではインターネットやスマートフォンなど、身体は離れていても脳でつながる装置をたくさんつくってしまった。だから、安易に「つながった」と錯覚するけれど、実際には信頼関係は担保できているわけではないという状況が生まれ
  • 脳ではなく、身体でひとつになっている感覚が、チームワークには必要だ
  • 約60万年前に脳の容量は1500ccに達し、人間は150人の群れを形成できるようになりました。この頃から現代に至るまで脳の容量は変わっておらず、今の人間も実は「150人の群れ」のための脳しか持ち合わせていない
  • 150人というのはマジックナンバーと言われていて、人間が記憶できる顔の数なんです。しかも、言葉で覚えているのではなく、過去に身体感覚を共有した人の数。何か困ったときに無条件に相談したり頼みに行ったりできる「社会資本」と呼びますよね。その社会資本となる人の数が150人ぐらいだろうと言われている
  • 150人より大きな規模の社会で暮らさなければいけなくなったから、7万年前にコミュニケーションのツールとして言葉ができたんでしょうね。ただ、言葉によるつながり、脳によるつながりは、信頼関係をつくる上では成功しなかった。だから、今でも身体的なつながりに依らざるを得ない
  • 脳ではつながろうとしているけれど、身体ではうまくつながれていない。友だちに対して、何かこうしっくりこない感覚を持ち続けているのが現代の若者たち
  • 便利な時代にいるからこそ、人とつきあうことがコストになっちゃっている
  • 友だちをつくる時間をコストと考えてはいけないですよね。共感力をつかって信頼関係をつくるには、時間をかけないといけないんです。共感と信頼は時間との係数だから、いくらお金を使っても1分で友だちになるのは無理
  • 僕は「自己実現をする人が成功者」だという考え方は大きな間違いだと思うんですよ。自分だけの目的を持つのではなく、他者と共有する目的を持ちながら、いろんな役割を演じる楽しさを経験したほうがいい
  • 人間がサルや類人猿から受け継いだのは、共感力を高めて協力関係を網の目のように張り巡らせることでしたよね。時間軸を広げることで、あるときは自分が犠牲になることがあっても、長い目で見れば自分も豊かになれる環境を模索できたから、類人猿には住めない環境に出て行けた

 

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人間の集団は、150人がマジックナンバーで、顔と名前が一致する、というのが、ファシリティマネージャーの場合は、大体300人がマジックナンバーだった。 仕事を共にすると、それ位まで、集団サイズを拡張出来ていた、ということなのだろうか。

 

新型コロナ感染拡大で、ワークフロムホームが思わぬ形で普及し、多くの組織体で、「オフィスなんて要らんな」という感触が拡がっているかも知れないけれど、それって本当にそうなのか、何を失うことになるのか、真剣に考える必要があると思う。

 

現代の最先端の会社組織の在り方として、本社を無くしたことで有名なソニックガーデン社でも、半年に1回は、合宿という形で、物理的に集まることを続けているらしい、というのが非常に示唆的だと思う。

kuranuki.sonicgarden.jp

 

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