扇子を献上

今日は職場で比較的大きなイベントがあって、プレゼン席に社長が座っていた。 開始前、照明などのせいで随分暑そうにしていて、上着を脱いでもまだ汗ばんでいたので、思い切っていつもポケットに入れている扇子を貸して上げた。 彼女が広げると偶然それは某大手プリンター会社が呉れた「S」の大きな文字が印字されたもので、「あら、私のイニシャルだわ!」と嬉しそうな顔。 後で返して、とも言えなくなってしまったので「どうぞ、差し上げますから」とにっこり笑って献上してしまった。 まあ、他に何本か扇子は持っているし、社長に使って貰えて扇子も喜んでいるだろうから、良しとするか。

それにしても米国人は暑がりが多い。 日本人なら丁度良いか、少し薄ら寒いと感じるような室温でも「暑い」と言って空調を更に下げようとする。 香港人も似たようなもので、香港支店に出張すると、寒々としたオフィスの個室で、カーディガンやらショールを掛けた女性マネージャー達が働いている。 男性社員はどうやら寒くないらしく、平気で半袖シャツだったりするのだが。 マニラ支店もシンガポール支店も同じ。 僕は普段日本ではYシャツ腕まくりなのに、これらの国に出張すると上着を着たままで、下手するとその上にウィンドブレーカーを羽織らねばならない程なのである。

今年の夏、家族旅行に行った香港でも同じように異様な低室温設定だった。 勿論、日本より遙かに赤道寄りに位置する南国なので、夏に空調を使うこと自体は否定しないが、温度設定が低過ぎる。 小学4年生の娘までが、「あの人達のせいで温暖化が進んでいるんじゃないの?」と嘆息した程である。 そういえばマレーシアのクアラルンプール近辺で二年間のシルバーボランティアを経験した義父もマレーシア人が異様な程の低い温度設定で冷蔵庫のような気温の中で生活していることに呆れていたのを思い出した。

どうも日本人は真面目に温暖化対策をしている、というだけではなくて、実際のところ世界の中ではかなり寒がりの部類に入るようでもある。 世界の多くの場所で、日本人にとって寒すぎる温度設定がなされている。 単に寒がりなのか、それとも日本人は人間が本当に体に快い温度というものに敏感なのか。 何となく後者であるような気もする。 

温暖化が危惧される今、都市部での余分な空調の節減でヒートアイランド現象を防ぐことが出来れば、空調関連のエネルギー消費を相当抑えることが出来そうに思う。 東南アジアの「冷房が強く効いて居れば居るほど金持ちの印である」というような困った文化を矯正することが出来たら、さぞかし省エネ効果が現れることと思う。