企業戦士?

先日、地下鉄の駅で、ちょっと変わったデイパックを背負った背広姿のサラリーマンを見掛けた。 後ろから見ると、デイパックから太めのケーブルが出ていて、その人の顔の辺りに伸びている。 背中にiPodでも入れているのかな?と思ったが、ちょっと違和感があったので良く見てみると、ケーブルと思ったのは細めのチューブで、それが紺色の背広を着た若いサラリーマン風の男性の鼻の穴に二股に分かれて入っている。 よく見ると背中のデイパックと思ったものは、どうやら医療機器らしい。 そんな鼻から何か注入し続けなくてはならないような状況なのに、本人は普通の表情で、ホームの自販機で缶入り緑茶か何かを買って飲んだりしているのが、なんとも不思議な状況である。 医療の素人なので、一体あの鼻の穴に繋がったチューブが何を彼の体に送っているのか、良くは分からないが、多分、継続的に何らかの栄養素を鼻の穴経由で送り込んでいるのだろう。 点滴的なものだったら、多分、わざわざ目立つ顔の真ん中から送り込んだりしないで、もっと目立たない処にチューブを挿入するだろうから。

それにしても、医療器具が、こんな風に日常生活の中に進出してくることも有り得るのか、と少々驚きを感じた。 勿論、小ぶりな買い物カートのようなものを引いて、それとチューブで繋がった人を時々見かけたりもする。 多分、内臓の障害などでその機能を一部、機械で代替して外出を可能にしているのだろう。 しかし普通の背広を着て、普通にオフィス街の地下鉄駅を歩き回っている若手サラリーマンが、鼻の穴にチューブを繋ぎ、背中に医療器具を背負っているのを見ると、一体これは何なのだろうか、と感じる。 自分でその「感じる」ことが何を指しているのか、完全にははっきりしないのだが。 

体調が悪いのに働かなくてはならない悲劇が気になるのか? 本人の顔つきは至って普通で、重い病状の中を無理して病院から出てきている、という風では無かった。 サイボーグ化された身体が気掛かり? 眼鏡も入れ歯も、欠損した身体の機能を補完するサイボーグ化技術の一つだと思うが、長い間人間の生活に馴染んだ比較的ローテクな補強だ。 やはりチューブを身体に挿入した状態で背中に正体の判らない器具を背負って外に出てきて仕事をしているらしい、というのが僕にとっての驚きなのだろう。 又、僕以外の地下鉄の利用者が、平然としているのも。