人が音を出すことについて

駅からの帰り、地下道の出入り口付近で、金属を叩く規則的な音が聞こえてきた。 テンポが速いので地下道の換気装置の異常かな、とも思ったが、何となく機械の立てる音とは違うような気がした。 で、地下道の出入り口から下を覗いてみると、ホームレスの人が手を振り回して、何かを叩いていたようだった。

そこでふと思ったのだが、もし人間が一生懸命に一定のテンポで何かを叩いて音を出そうとしても、きっと微妙にテンポに「ゆらぎ」が出てしまうに違いない。 だから僕が聞いた音も、何となく機械の出す本当の「規則的な」音とは違って聞こえたのだろう。

だとすると、その「ゆらぎ」にも、個人差があるのではないだろうか? 僕が一定リズムで叩く(つもりの)太鼓と、家内が叩く太鼓では、やはり微妙に「ゆらぎ」に個性があるのではないだろうか? そして、それが個々人の音楽の個性の根源にも存在するのかも知れない。