グッドラック 戦闘妖精・雪風を読了

名残惜しい気がしたが、帰りの電車で読了した。 で、後書を読んでいたら、これは後編で、前編「戦闘妖精・雪風」もやはり存在したのだ、ということが分った。 どうりでいやにとっつき難い設定だと思ったら、前編を読んでからこっちを読むことが期待されていた訳か。

とは言うものの、後編の最後、もう少し先まで描いて呉れ、と言いたいところでサクッと終わっているのは流石と言うべきなのだろうが、何となく残念だ。 主役(なのか?)の深井大尉だけでなく、上司のブッカー少佐、クーリィ准将も、この先どうなるのか、知りたい、と思うのは多分下世話なSF読みなのだろうけれども。

著者の神林氏に関しては、これが初めて読む著作だったが、多分、他の著書も面白いに違いない。 夏の初めに読みまくった「りかさん」シリーズ同様、気に入った同じ作者を怒涛のごとく読みまくる、というのが僕のパターンだから、これから暫くは神林作品に没頭する羽目になりそうだ。

尤も、仕事の方も極めて多忙になりそうだから、そんなに毎日読書三昧は出来そうに無いが、こういう勢いの付いた状態で、ガシガシ読んでゆくのは久々のことだから、大切にしよう。(というか、欲望を野放しにしよう)

この話は、認識論やコミュニケーションの主題に沿って展開していたと思う。 SFの中では結構珍しいテーマの話に思えたが、自分にとっては興味深い分野だ。 素っ気無い、しかし深い洞察の飛び交う中、深井(=深い?)大尉が段々変わってゆくのを観察するのは面白かった。 僕自身は実にナイーブで、深井大尉のように他人と没交渉な態度を取ることは得意ではなかったから、こういうタイプは何となく寂しげで可哀想に思っていたのだが、自分と外界を峻別し、ギリギリまで「自己の存在」の定義に拘る彼の(雪風の)態度には一種清々しさがあった。 それと比べると、自分はなんて曖昧で中途半端なんだろうとも思った。 ま、そうでないと大抵の場合、生きて行きにくいのが現実の世界だけれども。